契約書とその裏側のドラマ

私は

  1. 医療機関(クリニック)の顧問弁護士(法務コンサルティング)
  2. 医療機関の理事、監事
  3. 介護と医療の連携を支援するベンチャー企業の執行役員(法務・バックオフィス担当)

として活動しています。

3のベンチャー企業のいわば「インハウス(企業内弁護士)」としての役割だけちょっと毛色が違う感じがしますが、実は「契約書の作成・レビュー」という能力が磨かれる場だなと改めて感じています。

通常、第三者の弁護士として契約書をレビューする場合、クライアントから契約に至った経緯や背景のヒアリングは行うものの、自ずから契約当事者でないことからくる制約があります。

一方、企業内弁護士として契約締結業務に携わる場合、どのような背景で契約締結に至ったのか、どこまでのリスクであれば許容して事業をすすめるべきかを、ビジネスサイドのメンバーと議論して進めることになります。そして、契約の相手方との条件交渉を経て、契約に至ります。

そこには、「契約締結にいたるドラマ」があると言っても過言ではありません。

事業設計した部門の目指すところや営業部門の思いをくみ取りつつも、冷静にリスクを判断して、契約に落とし込むという作業が必要になります。

そういった「契約締結にいたるドラマ」を経験していると、顧問弁護士(=第三者的立場)として顧問先の契約書レビューを行う場合でも、どんなドラマがあったのかを考え、ヒアリングしてリスク判断を行うということが可能になると思っています。

一見、まったく毛色の違う業務だと思えても、法的支援という根幹は同じなので、日々勉強だなと感じているところです。

本ブログについての質問と回答・解説

Q. 相手から提示された契約書で注意すべき事項は何ですか。

A. 相手から提示された契約書は通常相手に有利に作成されています。そのため、相手に有利な点については修正を検討することが必要となります。
なお、契約内容の重要性に応じて、どこまで慎重に検討するかを考えることが大切です。

本ブログに関連する質問と回答・解説

Q. 契約書で注意すべき項目は何ですか。

A. 契約内容で決められた商品・サービスは何なのか、金額はいくらなのかということは最低限確認が必要です。
その上で、次のような条項の確認が必要です。

中途解約の条項

例えば、中途解約がしたくてもできない規定になっている場合などがあります。

損害賠償の条項

例えば、損害賠償額の上限が10万円などと設定されていて、多額の損害が発生したとしても損害の全額を請求できないことがあります。

知的財産権の条項

例えば、共同で開発した製品についての特許権などの知的財産権が誰のものになるかなどです。

Q. 損害賠償に関して自社が支払う可能性がある場合、定めておくと有利になる規定はありますか。

A. 例えば、次のような規定があります。

「損害賠償義務の上限は〇円」

損害賠償額の上限を決めておくことで、極端に高額な損害賠償を防ぐことができます。

「損害賠償は故意・重過失の場合だけ責任を負う」

通常の落ち度の場合には責任を負わなくなりますので、損害賠償を負う確率が下がります。

Q. 契約書というタイトルでなくても契約は成立しますか。

A. 成立します。覚書・確認書・合意書というような名前の書面でも契約は成立します。なお、一定の例外を除いては、書面がなくてもお互いが合意していれば契約が成立することが多いです。

以上

文責:弁護士 川﨑翔