個別指導の帯同・支援に対するスタンス

私は、医療機関の顧問弁護士、その中でも「厚生局による個別指導(新規指導を含む)」に対する帯同や支援に特化しております。

地方厚生局等が行う個別指導は、あくまで「行政指導」であり、強制力はありません。
しかし、これに従わない場合、監査や保険医・保険医療機関の指定取消しといった処分が後に控えていることを考慮すると事実上の強制力があると言わざるを得ません。

個別指導の当日だけでなく、その準備にとられる時間やリソース、そして、「自主返還」という名目で、診療報酬の返還を求められるという点も、クリニック経営に大きな影響を与えます。

もちろん、「概ね良好」または「経過観察」で個別指導が終結することが理想的です(これまで数例経験していますので、全く皆無というわけではないと思います。)。

しかし、現実はそう甘くはありません。
自主返還を求められた上で「再指導」との指摘を受ける場合もあります。

もちろん、日ごろからレセプト請求やカルテの記載について、細心の注意を払うことは必要です。
しかし、多忙な診察やクリニック運営の合間をぬって行わざるをえない上記業務について、完璧を求めるのは無理があると感じています。

「医療機関の顧問弁護士」としては、上記のようなクリニックの実情と厚生局側が考える保険請求のルールとをどう調和させていくのかが極めて重要だと考えています。

次に、保険医療機関の個別指導の帯同・支援に特化している私のスタンスについて、お話ししたいと思います。

個別指導の実施通知を受け取った保険医療機関に対して、実際にどのような支援・準備を行っているかを、説明したいと思います。

【実施通知受領後の初動】

まずは、クリニックの状況について、ヒアリングを行い、個別指導においてどのような問題点の指摘を受けやすいかを分析します。

診療科や患者さんの傾向、集団的個別指導を受けたことがあるのかといった点を中心にヒアリングします。

この時、利用している電子カルテや業務フロー、スタッフの配置、院長のポリシーなどを確認することも重要だと考えています。

【個別指導1週間前】

個別指導実施の1週間前には、個別指導の対象となる20名分のカルテが指定されます。
この20名分のカルテを分析することで、厚生局側がどのような点を問題視しているのかをある程度予測することができます。

20名分のカルテをひとつひとつ分析して、問題点を探し、どうすればクリニックの実情と厚生局側が考える保険請求のルールとを調和させることができるのかを検討していきます。

かなり時間のかかる作業になりますが、自主返還のリスクを減らすためには極めて重要な作業になります。

【個別指導前日】

個別指導実施の前日には、10名分のカルテが指定されます。

1週間前の20名分のカルテ分析がここで活きてきます。分析の時間を十分にとることは極めて難しいので、ポイントを絞って分析、対策を考えることになります。

個別指導当日は、原則として弁護士が回答することはできません。
したがって、この時点で、厚生局の指摘に対して、どのようにクリニック側の見解を伝えるのかを準備しておかなければなりません。

以上のような準備を入念に行い、個別指導当日を迎えることになります。
先ほども申し上げたように、当日弁護士が答えるわけにはいかないので、事前の準備が極めて重要です。

つづき(個別指導当日)については、次回またお話ししたいと思います。

以上

文責:弁護士 川﨑翔