コロナ禍と個別指導(新規指導)

厚生労働省保険局医療課医療指導監査室は、令和2年7月2日、事務連絡「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言解除に伴う指導・監査等の取扱いについて」において、概要、下記のとおり、コロナ禍における個別指導の在り方について、見解を示しました。

(概要)

  • 集団的個別指導については中止。
  • 個別指導、監査は原則実施(ただし、病院に対しては緊急を要する場合のみとし、実施する場合も病院外で行う 。)
  • 実施に当たっては、十分な飛沫感染対策及び接触感染対策を講じ、会場についてはいわゆる「三密」とならない環境を確保するとともに、職員の健康管理を徹底すること。また、必要に応じて指導時間の短縮等を考慮すること。

個別指導(新規個別指導)については、時間を短縮するなどの措置がとられる可能性はあるものの、引き続き実施するとの見解です(新規個別指導を最近受けたという事例も、ちらほら聞かれています。)。

コロナ禍の対応等が増加し、カルテの記載やレセプト請求時の誤りが増えることも予想されます。

当局の姿勢はあくまで「カルテに記載のないものは、保険請求できない」というものです。各種加算の請求においては、カルテ記載が必須となるものが多いです。今一度、カルテに十分な記載があるかを確認していただけると個別指導(新規指導)時のリスクを抑えられると思います。

ご不明な点や、個別指導の実施通知が届いた場合は、お気軽にご相談ください。

用語解説

指導とは

保険診療の質的向上と適正化を目的として行われるもので、保険制度が円滑に運用されるように行政機関によって行われる行政指導のことを保険医療機関への「指導」といいます。

この指導は、保険医療機関、保険医として指定、登録されたすべて医療機関が対象となります。

また、指導の形態には、集団指導、集団的個別指導及び個別指導があります。個別指導のうち、厚生労働省・地方厚生(支)局・都道府県が共同して行うものを共同指導といい、特に大学附属病院、臨床研修病院等を対象として行うものを特定共同指導といいます。

指導が行われた後、「概ね妥当」、「経過観察」、「再指導」及び「要監査」という行政上の措置が取られることとなります。

個別指導

保険医療機関等から診療報酬請求等に関する情報提供があった場合、個別指導を実施したが改善が見られない場合、集団的個別指導を受けた保険医療機関等のうち、翌年度の実績においても、なお高点数保険医療機関等に該当する場合等に、保険医療機関等を一定の場所に集める等して個別面談方式により行う指導のことを指します。

集団的個別指導

保険医療機関等の機能、診療科等を基準とする類型区分(一般病院か精神病院か、内科か外科かなどの区分)に応じて、診療(調剤)報酬明細書の1件当たりの平均点数が高い保険医療機関等を一定の場所に集めて講義形式等で行う指導のことを指します。

監査とは

診療内容及び診療報酬請求に不正又は著しい不当があったことを疑うに足る理由があるときに行われるものです。監査の目的は、保険医療機関等の診療内容又は診療報酬の請求について、不正又は著しい不当が疑われる場合等に、的確に事実関係を把握し、公正かつ適切な措置を執ることにあります。

監査が行われると、保険医療機関、保険医の「取消」、「戒告」、「注意」といった行政上の措置が執られる可能性があります。

なお、保険医の登録が取消となる基準及び保険医療機関の指定が取消となる基準は以下のとおりです。故意でなくとも、重大な過失が認められれば処分の対象となりますので注意が必要です。

  1. 故意に不正又は不当な診療(診療報酬の請求)を行なったもの。
  2. 重大な過失により、不正又は不当は診療(診療報酬の請求)をしばしば 行なったもの。

以上

文責:弁護士 川﨑翔