産業医の先生の勉強会に参加しました

2か月に1回、大学の先輩である産業医の先生が主催されている勉強会に参加しています。

産業医や保健師、人事担当者の方々が参加されている勉強会で、産業衛生に関するトピックやケーススタディに関するディスカッションなど、いつも勉強になります(弁護士の参加者は私だけということが多いので、弁護士の視点で議論に参加しています。)。

コロナ禍の影響によるリモートワークの普及により、メンタル不調の方への休職・復職を含めたケアも多様化しています。

主治医や産業医の意見を参考にしつつも、最終的には会社側がどうやって合理的な判断を下すかという視点が重要ですね。

本ブログについての質問と回答・解説

Q. コロナ禍におけるメンタル不調者への休職・復職を含めたケアについて教えてください。

A. 日本産業衛生学会の産業精神衛生研究会が発した「コロナ禍の労働者に対する支援に関して産業保健職が留意すべき事項〜産業精神衛生研究会からの提言・追補版〜」には、次のような対策例が紹介されています。

  • ストレス・メンタルヘルス⾯の現状把握としてウェブサイトによる簡単な質問形式による調査を実施する。
  • ストレスチェックの結果をコロナ禍以前のものと⽐較し、ストレス反応、ストレス要因の変化を分析する。
  • 期限付きで感染⾼リスク者が在宅勤務できるような仕組みの導入の検討を企業に依頼する。
  • 休職中の者が在宅勤務により復職できないか、その際に考慮すべき点はどのようなものかについて人事部署と協議をする。
  • 出勤をする者が在宅勤務者よりも過重な負担を負うことを避けるために、⼈事部署と協議をする。
  • メンタルヘルスの不調や⾼ストレスの状態にあると把握している従業員に対する産業保健職によるオンライン⾯談を呼び掛ける。睡眠のリズムが不安定になっている者、飲酒量が増えている者などが明らかになったときは、その後定期的な声掛けを⾏う。
  • テレワークに従事する者に対し勤務時間外に連絡をとることを極⼒控える重要性を発信する。

参考URL:コロナ禍の労働者に対する⽀援に関して産業保健職が留意すべき事項

本ブログについての用語解説

産業医

事業場において、その事業場に勤務する労働者の健康管理等のために、必要な助言や指導、勧告を行う医師です。
産業医は、労働安全衛生規則という厚生労働省令が定める要件を備えたかたである必要があります。医師免許をもつかたが誰でもなれるわけではありません。
事業場に勤務する労働者の人数規模や従事する業務によって、産業医を選任する義務があったりなかったりするほか、産業医を選任する義務がある場合でも、嘱託産業医(非常勤)でもよかったり専属産業医でなければならなかったりします。専属産業医の勤務日数は特に決められていませんが、基本的に週に4日程度常勤することが目安です。
産業医の業務として、たとえば次のようなものが挙げられます。業務内容において嘱託産業医と専属産業医に違いはありません。

  • 健康診断の結果チェック及び事後の指導、就業判定
  • ストレスチェック制度に基づく高ストレス者の面接・指導
  • 休業者に対する復職の可否の意見
  • 就業上の配慮に関する判断をし、指導や勧告を行うこと(作用環境等により従業員に健康被害が発生するリスク判定等)
  • 長時間労働者への面接
  • 衛生委員会への参加(勤務する労働者が常時50名以上の事業場においては、衛生委員会を設置しなければなりません。)
  • 原則1か月に1回の(要件を満たしたときは2か月に1回の)職場巡視

患者の治療を行うわけではないというのが大きな特徴といえます。
古い資料ですが、産業医を選任する義務のある事業場のうち実際に産業医を選任している事業場の割合は約87%という状況である統計が示されています。

参考URL:現行の産業医制度の概要等

保健師

ここでは、企業に就職して従業員の健康維持や改善に取り組む保健師を指します。企業には保健師を選任する法的義務はないので、多くの企業は保健師を設置していません。
主要な業務は従業員の健康増進に向けた保健指導やメンタルヘルス対策などですが、産業医のサポートなども期待されていることが多いです。

以上

文責:弁護士 川﨑翔