オンライン診療のアプリを利用しなくてもオンライン診療はできる?

現在、オンライン診療専門のアプリの普及が進んでいますが、必ずしもオンライン診療のために専用のシステムを利用しなければいけないということはありません。

厚労省が出している「オンライン診療の適切な実施に関する指針」でもオンライン診療実施にあたって、【汎用サービス】の利用が認められています(指針22頁)。

※汎用サービス:オンライン診療に限らず広く用いられるサービスであって、視覚及び聴覚を用いる情報通信機器のシステムを使用するもの。

いわゆるビデオ通話やウェブ会議のシステムが【汎用サービス】に該当するでしょう。
ただし、【汎用サービス】を利用する場合、下記の点に注意が必要です。

  1. 「医師が汎用サービスを用いる場合に特に留意すべき事項」(指針23頁)を遵守すること。
  2. セキュリティの要件(指針24頁「オンライン診療システム事業者が行うべき対策」)が満たされていることを確認すること。

汎用サービスの提供会社に対して、指針の条件を満たしているか問い合わせるといった検証が必要でしょう。今後は、汎用サービスの提供会社の方で、オンライン診療の要件を満たしているかを公表し、オンライン診療の需要を取り込むという展開もありそうです。

本ブログについての質問と回答・解説

Q. 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」は、令和4年1月に改訂されたと聞きましたが、改訂のポイントについて、簡単に教えてください。

A. ポイントとしては、改訂前の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(以下「本指針」といいます。)では、初診対面の原則が定められていましたが、今回の改訂により、当該原則が緩和された点が挙げられます。
大きな変更になりますので、改訂後の本指針を十分に理解する必要があります。

Q. 「医師が汎用サービスを用いる場合に特に留意すべき事項」について、大まかな概要を教えて下さい。

A. オンライン診療システムを用いる場合と異なり、それぞれの汎用サービス自体に内在するリスクを理解し、医師の側で必要な対策を取る必要があります。そのため、医師の側で使用する汎用サービスのセキュリティポリシーを確認して、必要に応じて患者に説明することや、汎用サービスが端末内にある他のデータと連結しないように設定すること、が求められます。

また、医師のなりすましを防止するために、原則として①顔写真付きの「身分証明書」と②「医籍登録年」を示すことが必要になります。

なお、①については、マイナンバーカード、運転免許証、パスポート等(ただし、マイナンバー、住所、本籍等にかかる情報を示す必要はありません。)が、②についてはHPKIカードを使用するのが望ましいとされています(※「HPKI」とは、保険医療福祉分野の公開鍵基盤(Healthcare Public Key Infrastructure)の略称)。

端末を立ち上げる際、パスワード認証や、指紋認証などの生体認証を用いて、操作する人の認証を行うことも求められます。

さらに、第三者がオンライン診療に参加するのを防止するために、患者の側からでなく、医師の側からつなげることが必要とされます。

本ブログについての用語解説

オンライン診療

遠隔医療のうち、医師と患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為

遠隔医療

情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する行為

本ブログに関連する質問と回答

Q. 本指針の対象は、保険診療のみでしょうか。自由診療も対象でしょうか。

A. 本指針は、保険診療のみならず、自由診療におけるオンライン診療も対象になります。

Q. 本指針では、初診については、「かかりつけの医師」が行うことが原則とされていますが、「かかりつけ医」には、最後の診察からの期間など、明確な基準はありますか。

A. 本指針における「かかりつけ医」とは、日頃より直接の対面診療を重ねているなど、患者との直接的な関係が既に存在する医師とされており、最後の診療からの期間など、明確な基準までは設けられておりません。

以上

文責:弁護士 川﨑翔