新規個別指導と再指導

今回は新規個別指導についてお話しします。 クリニックを開設した場合、新規個別指導を受けることになります。

新規個別指導では、厚生局が指定する対象患者10名について指導を受ける形になります。

クリニックの体制が整っていない状況ですと、厚生局からカルテ記載の不備について指摘されやすい傾向にあります。自主返還を求められるケースも少なくありません。

問題は、指導結果です。【概ね妥当】や【経過観察】であればいいのですが(それでも厚生局からの指摘事項への対応を行う必要があります。)、【再指導】となってしまうと、概ね1年以内に再度、個別指導がなされることになります。

新規個別指導の場合、自主返還は指摘された事例についてのみですが、個別指導(再指導)の場合、すべての患者に同様の事項がないか確認して(「自主点検」)、返還する必要が出てしまいます。

新規個別指導と比べ個別指導での返還額は多くなることがほとんどです。新規個別指導の段階で適切な対応をしておくべきでしょう。

本ブログについての質問と回答・解説

Q. 新規個別指導はいつ行われますか?

A. 医療機関の新規開院後、半年から1年程度で、所管する地方厚生局から、保険診療の内容について、「新規個別指導(新規指導)」を受けることになります。

Q. 新規個別指導の実施はいつ通知されますか?

A. 新規個別指導の実施日の約1か月前に通知され、10人の患者が指定されます。
(通常の個別指導では、実施日の2週間前に患者20人を指定され、前日に10人に絞られるので、直前までどの患者が対象となるか分かりません。)

Q. 新規個別指導の事前準備はできますか?

A. 個別指導においては事前準備が非常に大切です。
新規個別指導の場合には、通知の時点で対象となる患者10人が指定されるので、そのカルテを分析し、問題点をチェックし、当日の対応を検討します。大変な作業ですが、自主返還のリスクを減らすためには極めて重要な作業になります。

よつば総合法律事務所では、医療機関に特化した弁護士が個別指導の前の準備・検討からサポートさせていただきます。もちろん、個別指導当日に弁護士が帯同することも可能です。

本ブログについての用語解説

新規個別指導

新しく開業した医療機関に対して、開業後約1年で実施される個別指導です。新規開業のほか、管理者が交代したときにも新規個別指導が行われます。

おおむね妥当

個別指導の結果、特に問題点がなかった場合の評価です。指導は終了になります。

経過観察

個別指導で問題点が指摘されたものの程度が軽微な場合の評価です。一定期間レセプトの経過観察が行われ、改善がみられれば指導終了です。

再指導

個別指導で軽微でない問題点が指摘された場合の評価です。当該個別指導の後に、改善されているかどうかを確認するために、約1年程度で再度個別指導を受けることになります。

自主返還

個別指導の結果、厚生局が不当な請求と判断したものについて、自主的に診療報酬を返還するよう求められます。建前上は任意の返還を求めるものですが、拒否した場合には、再指導だけでなく、監査や保険医・保険医療機関の指定取消しといった処分が後に控えていることから事実上返還せざるを得ず、クリニックの経営に大きな影響を与えます。

以上

文責:弁護士 川﨑翔