【医療機関向け顧問弁護士】の「使い方」

私は医療機関(特にクリニック(診療所))の顧問弁護士としての業務に特化しています。

【医療機関向け顧問弁護士】というサービスを打ち出した当初、「医療機関はあまり問題をおこさないので、顧問弁護士としてのニーズはない」と指摘を受けました。

確かに、医療機関は保険診療を行っているため、産婦人科や美容外科を除き、料金でのトラブルや債権回収のニーズはあまり多くないといわれています。

また、労務についても、医師や看護師は人材の流動性が高く(転職が容易)、労務問題に発展しにくいという事情があります。

「他の企業と同じようなトラブルは少ない」という指摘は、あながち間違いではありません。

一方で、厚生局からの個別指導に対するアドバイス・帯同を行う弁護士はいまだに少ないです。また、医療過誤等のクレーム対応についても、応対する担当者を弁護士がサポートすべき場面は意外と多いと感じています。処置や手術の同意書や説明書の作成・改訂について、弁護士が関与すべき場合もあると思います。

つまり、業界特有の法的問題については、顧問弁護士のニーズがあると感じています。

個別指導への帯同・コンサルティング

やはり、医療機関の顧問弁護士として、最もお問い合わせ・ご依頼が多いのが、「個別指導(帯同を含む)への対応」です。

個別指導に弁護士が帯同するというケースはまだまだ少なく、個別指導に向けた事前準備に弁護士が関わるというケースはさらに少ないです。

弁護士が帯同するというと「そんなにおおごとにしなくても。。。」という印象もあるようです。

しかし、弁護士が個別指導にかかわる意義は大きいと思っています。

決して「地方厚生局と対決すればいい」という単純なものではありません。厚生局からの指導を受けられる貴重な場ですから、積極的にカルテの記載をはじめとする業務改善のきっかけとすべきです。そのためにも、30例のカルテが指定された段階で、保険請求に誤りがなかったか検証することが極めて重要です。

一方で、厚生局側の「自主返還ありき」の姿勢には毅然と立ち向かう必要があるでしょう。

保険診療として、医療機関に求められるものは何かという観点から考えていく必要があります。

個別指導への対応については、業界への理解が不可欠です。

個別指導への対応こそ【医療機関向け顧問弁護士】を使っていただく場面といえるでしょう。

労務問題への対応

先ほど、医療機関向け顧問弁護士として、厚生局の個別指導への帯同やコンサルティングを行っているというお話しをしました。保険診療をしている医療機関に特有の法的リスクであるため、医療機関に特化した弁護士を利用するメリットが大きいと感じています。

労務問題についてお話しをしたいと思います。

先ほど、「医師や看護師は人材の流動性が高く(転職が容易)、労務問題に発展しにくい」というお話しをしました。

確かにそういう側面もあるのですが、クリニック(診療所)のような小規模な組織においては必ずしもそういうケースばかりではありません。クリニックは通常の会社と比較すると以下のような特徴があります。

  • 部署が少なく、配置転換が難しい。
  • 職種間のコミュニケーションが十分でないケースも多い。
  • メンバーが少ないので、問題のあるスタッフがいることで、クリニックにとって重要な人材が辞めてしまうケースも多い。

特に、患者対応に問題があったり、同僚や他の職員との関係をうまく構築できないスタッフがいた場合、問題が大きくなりがちです。

スタッフ間のコミュニケーションのずれを是正したり、場合によっては退職していただくといった対応も必要になります。他方、対応を誤れば、組織が崩壊しかねません。

そういった場合、顧問弁護士としてサポート、場合によってはスタッフとの面談に同席することもしています。労務問題についてはクリニック特有の対応が求められると感じています。

クリニックの労務問題においても、【医療機関向け顧問弁護士】を使っていただく場面が多いと思います。

「同意書・説明書類のチェック(レビュー)」

「同意書・説明書類のチェック(レビュー)」についてお話ししたいと思います。

クリニック運営において、患者さんにお渡しする同意書や説明書類の内容は重要です。

記載内容や書式についてご相談いただくことも多いです。

医療機関向け顧問弁護士として気をつけなければいけないのは、わかりやすい内容にしつつも、業務フローを阻害しないようにするという点です。

例えば、同意書の数や記載内容を多くすれば、「〇〇の点に関する説明は聞いていない!」などというクレームを減らすことができます。

一方で、同意書の数が増えすぎると、スムースな業務を阻害します。スタッフやナースが患者さんに対して説明する時間が増え、患者さんからは「なぜこの同意書にサインしなければいけないのか、さっきの同意書とはどう違うのか」といったクレームが生じます。

トラブルを減らすための同意書や説明書なのに、それが原因でトラブルが増えては本末転倒です。

各診療科の特徴や同意・説明の必要性、各クリニックの業務フローを理解したうえでアドバイスするように心がけています。

以上

文責:弁護士 川﨑翔