情報通信機器の発達とともに「遠隔医療」(情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する行為)の需要は高まっているといえるでしょう。
医師法20条は無診察診療を禁止していますが、厚生労働省は通達で、徐々に遠隔医療の範囲を拡大してきました。
平成30年にはオンライン診療(医師患者間において、情報通信機器を通して、患者の診療及び診断を行い、診断結果を伝達する等の診療行為をリアルタイムで行う行為)について、ガイドラインが策定されることになっています。
ガイドラインに規定された事項を順守している限り、医師法20条には抵触しないということになります。
現時点では以下の内容が規定される見込みです。
- 初診は原則として対面診療が必要。
- オンライン診療における「診療計画」の策定が必要。
- オンライン診療をおこなう医師は、医療機関に所属していることが必要。
- 特定多数人にオンライン診療を提供する場合には診療所の届出が必要。
今後もガイドラインの策定を注視していく必要がありそうです。
なお、今回のガイドラインでは「遠隔医療相談」(医師患者間において、情報通信機器を活用して得られた情報のやり取りをおこなうが、一般的な情報の提供にとどまり、診断等の意思の医学的判断を伴わない行為)については、対象外とされており、この点についても、厚労省の指針等が待たれます。
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Q. 新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえて、一時的に、初診でも電話や情報通信機器を通じての診療が可能になったとききました。患者さんから電話などでの診療を求められたが、自分の医院では電話などでの診療は対応が難しいと考えた場合に、診療を断るのは応召義務に違反するのでしょうか。
A. 応召義務には違反しません。あくまで、「当該医師の責任の下で医学的に可能であると判断した範囲において」、初診から電話などによる診療・処方をしても差し支えないとされているだけで、必ず電話での診療に応じなければならないわけではありません。
Q. 新型コロナウイルス拡大対応の一時的な措置を踏まえ、初診から電話などによる診療を可能としている医療機関を厚労省がまとめて公表しています。公表されていない医療機関は、同措置に基づいて初診で電話診療をしてはいけないのでしょうか。
A. 厳密には禁止されていませんが、厚労省は電話などでの診療を実施する場合には速やかに報告することを求めています。
注意しなければならないのは、初診から電話などでの診療が可能となるのは、患者側が求めた場合だけだという点です。医師側の都合で電話などでの診療をすることはできません。
また、初診を電話などでの診療とした場合、その診療で処方できる薬は7日分までと制限されていることにも留意する必要があります。
Q. 初診を電話で行った後、再度同じ医師が電話で診療する場合は再診にあたるのでしょうか。
A. 対面での診療を行ったことがないので、この場合の2回目の診療も十分な情報に基づいたものではないと考えられます。そのため、初診を電話で行う場合と同様の対応をとる必要があります。ただし、診療報酬については電話等再診料を算定することとされています。
以上