「コンプライアンス違反」倒産

東京商工リサーチがH30.4.4の記事で「2017年度に業・法令違反や脱税、粉飾決算などの「コンプライアンス違反」が一因になった倒産は195件(前年度179件)発生、3年ぶりに前年度を上回った」と報じています。

2017年度「コンプライアンス違反」倒産

特に介護事業では、不正請求を行政から指摘され、介護保険法に基づく指定取消などの処分を受けて倒産するというケースも増加しているようです。

医療機関にとっても、決して他人事ではありません。
医療法人として、介護事業を展開している場合は、上記の介護保険法に基づく指定取消があり得ますし、個別指導による返戻や保険医療機関や保険医の指定取消も倒産リスクになります。

「行政による調査→処分という手順を踏んでいるのだから、処分される方が悪いに決まっている。」
そんな声が聞こえてきそうですが、必ずしもそうではないと感じています。

もちろん、故意の不正は糾弾されるべきです。
しかし、十分に制度を理解していなかったり、行政と見解が違ったことを「故意の不正」と行政が認定することも、多いと感じています。

一度「コンプライアンス違反があった」というレッテルを貼られてしまうと、取引先や患者さんからの信頼を回復するのには時間がかかります。

コンプライアンスの意識を欠くことが、「倒産リスク」になる、そんな時代になってきているのです。

本ブログについての質問と回答・解説

Q. どういった場合に保険医の指定取消がなされるのでしょうか。

A. 代表的なのは、診療報酬を水増しして不正に請求した場合です。他にも、保険医療機関がその責務に違反して診療録の整備を行わなかったり、厚生労働大臣に帳簿の提出を命じられたにもかかわらずこれに応じなったりすることなどが指定取消事由にあたります。

また、保険医療機関において従事する保険医がその責務に反して漫然治療をしたり、薬価基準未収載医薬品を使用したりすることも、当該保険医の登録取消事由となるのみならず、保険医療機関の指定取消事由になります。

その他にも、医療保険各法に関する医療について、健康保険法に定められた指定取消事由に相当する違反があればその違反も指定取消事由となります。指定取消事由の範囲は広く、該当するかどうか判断が難しい場合もありますので、心配な場合は一度弁護士にご相談ください。

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Q. 指定取消以外の行政上の措置はあるのでしょうか。

A. 指定取消処分は重い行政処分ですが、行政処分に該当しない(法律上の効果が無い)措置として、「注意」「戒告」があり、事案の程度に応じて軽い順に「注意」「戒告」「指定取消」が行われます。

ただ、「注意」「戒告」も事実上の措置とはいえ、保険医療機関の信用が損なわれる可能性は十分にあります。また、将来の指定取消の1要素ともなりえます。普段からコンプライアンスに注意を払い、行政上の措置を回避することが重要です。

Q. なんの前触れもなくいきなり指定取消等がなされるのでしょうか。

A. 通常は、指定取消や戒告・注意の前には個別指導や監査がなされます。

そして監査の結果、取消処分に該当すると認められると、取消処分の予定者に意見を聞く手続(「聴聞」という手続です。)が行われ、その後に指定取消処分がなされます。

指定取消を避けるためには聴聞の際に保険医療機関側の意見をしっかり伝えることが重要です。事前に弁護士に相談することで、より効果的な意見陳述が可能となります。

以上

文責:弁護士 川﨑翔