先日、産業医の先生が開催する勉強会に参加しました。
参加者は約30名で、弁護士は少数派で、産業医の先生、看護師・保健師の方、大手企業の人事担当者の方が大部分でした。
メンタルヘルスが問題になる場合、復職などの関係でどのような診断書を作成すべきかという点には難しい問題があります。
また、具体的なケースについて、医療・法律・会社の組織設計等を含め、多角的な分析が必要になります。弁護士として何点かコメントをさせていただき、議論に参加しました。
それぞれの視点からの議論はとても刺激になりました。
「働き方改革」が注目されるようになり、今後、メンタルヘルスへの対応は企業として重要なものになる一方、医師が産業医や主治医として「労務」の世界にかかわることが増えるでしょう。
今後も継続的に勉強していきたいと思います。
用語解説
産業医
事業場において、その事業場に勤務する労働者の健康管理等のために、必要な助言や指導、勧告を行う医師です。
産業医は、労働安全衛生規則という厚生労働省令が定める要件を備えたかたである必要があります。医師免許をもつかたが誰でもなれるわけではありません。
事業場に勤務する労働者の人数規模や従事する業務によって、産業医を選任する義務があったりなかったりするほか、産業医を選任する義務がある場合でも、嘱託産業医(非常勤)でもよかったり専属産業医でなければならなかったりします。
専属産業医の勤務日数は特に決められていませんが、基本的に週に4日程度常勤することが目安です。
産業医の業務として、たとえば次のようなものが挙げられます。業務内容において嘱託産業医と専属産業医に違いはありません。
- 健康診断の結果チェック及び事後の指導、就業判定
- ストレスチェック制度に基づく高ストレス者の面接・指導
- 休業者に対する復職の可否の意見
- 就業上の配慮に関する判断をし、指導や勧告を行うこと(作用環境等により従業員に健康被害が発生するリスク判定等)
- 長時間労働者への面接
- 衛生委員会への参加(勤務する労働者が常時50名以上の事業場においては、衛生委員会を設置しなければなりません。)
- 原則1か月に1回の(要件を満たしたときは2か月に1回の)職場巡視
患者の治療を行うわけではないというのが大きな特徴といえます。
古い資料ですが、産業医を選任する義務のある事業場のうち実際に産業医を選任している事業場の割合は約87%という状況である統計が示されています。
保健師
ここでは、企業に就職して従業員の健康維持や改善に取り組む保健師を指します。企業には保健師を選任する法的義務はないので、多くの企業は保健師を設置していません。
主要な業務は従業員の健康増進に向けた保健指導やメンタルヘルス対策などですが、産業医のサポートなども期待されていることが多いです。
本ブログについての質問と回答・解説
Q. メンタルヘルスの不調を訴えるスタッフへの対応で気を付けるべき点はありますか?
A. メンタルヘルスの不調の原因はどこにあるのか、業務に与える影響はどの程度か、当該スタッフに対してクリニックとしてどのような対応をとるべきか、など検討すべき点は多岐に渡ります。
メンタルヘルスの不調を訴えるスタッフへの対応を怠ると、「クリニックに安全配慮義務違反がある」などとして、損害賠償を請求されるリスクさえあり、慎重な対応が必要です。また、休職命令等を含めた対応が必要になることもあり、就業規則の整備など事前の対策も極めて重要です。
当事務所では、顧問弁護士として、問題スタッフの対応と同様、事前の対策から発生直後の初動、メンタル不調者への面談など、一貫した対応をおこなっています。
以上