市販のCDやインターネット配信された音源を利用してBGMを流しているクリニックも多いと思います。
そんなとき、ふと不安になったことはありませんか?
「普通の店舗と同じように、JASRAC(日本音楽著作権協会)に使用料を支払う必要はないのだろうか?」
通常の店舗等であれば、店舗面積等に応じた使用料をJASRACに支払う必要があります。
しかし、「医療施設(医療法・介護保険法に基づく施設)での利用」の場合、現状は使用料免除ということになっています。
https://www.jasrac.or.jp/info/bgm/index.html
そのため、クリニック(診療所:医療法第1条の5第2項)は、使用料を支払う必要がありません。JASRACもクリニックには「潜入調査」しないでしょう。
本ブログに関連する質問と回答・解説
Q. なぜJASRACに使用料を支払わなければならないのですか?
A. 著作権者がJASRACと契約しているからです。
著作権は音楽が作られた段階で、作曲者のもとに自動的に発生します。そして著作権者である作曲者が何もしなければ、作曲者は自分で著作権を管理することになります。つまり、作曲者自ら使用料を徴収したり、著作権侵害行為があれば警告を発したり法的な対応をとったりしなければならないのです。しかし、個人がそのようなことをするのは無理な話です。
そのため、多くの作曲家(著作権者)はJASRACと契約して自分の曲の著作権の管理を依頼します。そうすることで、JASRACのノウハウを用いて効率的に著作権を管理できるようになるのです。JASRACに使用料を支払わなければならないのは、JASRACが作曲者に代わって曲の使用料を徴収する権限を持っているからなのです。
ちなみに、JASRACのイメージの強い著作権管理事業ですが、文化庁長官の登録を受けた法人であれば他の者も著作権管理事業を行うことができます。JASRAC以外の著作権管理団体としては、2015年にエイベックスが設立したNexToneが挙げられます。
Q. 使用料が免除となる「医療施設(医療法・介護保険法に基づく施設)」の範囲を教えてください。
A. 「病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、調剤を実施する薬局その他の医療を提供する施設」は医療法で「医療提供施設」とされているため、これらの施設では使用料免除となります。
また、指定介護老人福祉施設も介護保険法に基づく施設であるため、使用料免除となります。
一方で、あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう及び柔道整復を扱う施設(整骨院など)については、医療法や介護保険法で言及されていないため、使用料免除の対象外となります。調剤を実施しない薬局も同様に、使用料免除の対象外です。
Q. 著作権を侵害すると何が起こるのですか?
A. JASRAC等の著作権管理団体に損害賠償を請求されたり、場合によっては刑事罰(10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方)が課されたりします。
さらに2018年の改正著作権法施行により著作権侵害罪の一部は親告罪ではなくなったため、お店でBGMを流して著作権を侵害すると、誰にも告訴されなくても刑罰の対象となる可能性があります。
以上