コロナ禍で個別指導の実施が延期になっていましたが、最近、新規個別指導や再指導の実施が再開されています。
2022年9月から11月だけでもすでに4件(うち新規指導2件、再指導2件)のご依頼がありました。今回は、新規個別指導のポイントについて、まとめてみたいと思います。
1. 新規個別指導は、必ず実施される。
当然といえば当然なのですが、指導を受けずに済むということはありません(かつては、医療法人の承継等の理由で新規個別指導が実施されないケースもありましたが、現在ではそういった運用はないと聞いています。)。
したがって、診療報酬の自主返還や「再指導」との評価がされないようカルテの記載方法を再確認しておくことが必須です。「新規個別指導なので、あまり厳しいことは言われないはず。」といった甘い見通しで痛い目をみるというケースも後を絶ちません(もちろん、個別指導(再指導)と比べると、教育的指導という側面も強いですが。)。
では、具体的にどういった点に注意していくべきでしょうか。
2. 典型的な指摘事項に注意!
新規個別指導は、ご案内のとおり、指導対象のカルテは10例です(病院の場合は20例、通常の個別指導は30件です。)。
通常の個別指導は、以前とは違い内部通報等が端緒のものが多く、指定されるカルテにもある程度の傾向がみられます。一方で新規個別指導の場合、典型的な指摘事項が対象になることが多いです。
例えば、外来管理加算や特定疾患療養管理料など、カルテの記載内容が算定の要素となっているものです(最近では、在宅自己注射指導管理料やリハビリテーション総合計画評価料などの指摘も増えています。)。
確かに、医師法24条1項では「医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。」と規定されているのみで、いつまでにカルテを記載しなければならないというような規制はありません(訪問診療など、診察時には簡単なメモを作り、クリニックに戻ってからカルテを入力するというケースもあるでしょう。)。
しかし、新規個別指導直前にカルテ記載の補充があれば、偽造などと言われかねません。日々の忙しい診療の中で「完璧な記載」を行うことは極めて困難ですが、必要最小限のカルテ記載を行うことで、診療報酬の自主返還のリスクを抑えることは可能です。
新規個別指導を迎えることを契機として、カルテ記載の方法を見直すというのも、クリニック経営においては重要な点です。
3. 「再指導」との評価を受けないようにする。
新規個別指導である程度、厚生局から指摘やアドバイスを受けること自体は、クリニック経営にとって有益です。場合によってはクリニック側がとっていなかった加算等のアドバイスをくれることもあります。算定等で悩んでいた点を尋ねることも可能です。
しかし、指導の結果、「再指導」とされることは可能な限り回避すべきでしょう。再指導となってしまうと1年〜2年程度でまた個別指導を受けることになってしまいます。
再び受ける個別指導は
- 指定されるカルテが30件(一週間前に20件、前日に10件)と準備の負担も大きい。
- 診療報酬の自主返還となった場合、当該患者だけでなく、一年分の全患者のカルテを自主点検して、指摘事項にかかる診療報酬を返還する必要がある。
- 明確にいつ指導が実施されるのかわからない。
といった点でクリニックに与える影響が極めて大きいです。
なにより、いつ来るかわからない個別指導を気にしながら日々の診療にあたることは思いのほか、ストレスになります。
新規個別指導についても、クリニック経営における他の法的リスクと同じく、「過度に恐れず、準備を怠らない」ということが極めて重要です。可能であれば、新規個別指導の実施通知が来る前にご相談ください。