クリニック経営と人材紹介

クリニックの顧問弁護士をしていて、意外とご相談が多いのが「人材紹介会社とのトラブル」です(なお、人材紹介そのものを否定する趣旨ではありませんので、念のため。)。

特に、人材紹介会社を利用して勤務医を採用する場合のトラブル事例が多いですね。
紹介された医師が突然辞めた、患者とトラブルをおこした、期待していた能力が無いなどの事例です。

人材紹介会社を通じて勤務医を採用した場合、当然紹介料が発生するわけですが、採用した医師の年収に応じて紹介料がきまる(20%程度)ので、総じて費用は高くなります。
そのため、トラブルになった場合の被害が大きいという特徴があります。

紹介を受けた医師を採用する際に、十分な面接を行うということも重要ですが、人材紹介会社との契約内容を十分に把握することがポイントです。
トラブル内容によっては、紹介料の一部が返金される場合もありますし、そうでなくとも、継続的な関係を考慮して、返金に応じてくれる場合もあります。

よりよいクリニック運営のために、賢く人材紹介会社と付き合っていくことが重要です。

本ブログについての質問と回答・解説

Q. 紹介料の返金についてもう少し詳しく教えてください。

1. 返金をすることが契約の内容やルールになっていることがあります。

採用した人が○か月以内に退職した場合には成功報酬(紹介料)の返還を行うという条項が人材紹介会社との契約書に書いてあったり、そうでなくても人材紹介会社の自主ルールで決めてあったりすることがあります。
全額を返還するとかそのうちの何割を返還するとか様々です。

2. 契約の内容やルールになっていなくても返金されることがあります。

採用に至った人の評価や在職期間によっては、今後の関係を重視して、人材紹介会社が返金を行うことがあります。
いずれにせよ、まずは、人材紹介会社に対し、採用した人のその後に関する情報を提供しておくとよいでしょう。

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Q. 転職情報提供と人材紹介の違いは何ですか。

転職情報提供は転職情報サイトと呼ばれる媒体を運営する会社などが行っていることが多いです。企業側が転職情報サイトに求人情報掲載を依頼し、その求人情報を見た転職希望者が、直接企業側に応募するという形態です。

転職情報サイト運営会社は求人情報を掲載するだけです。求人情報掲載を依頼する際や掲載を継続している間の掲載料が発生することが多いです。

一方、人材紹介は転職エージェントとも呼ばれます。

  • まず企業側から直接採用条件等の提供を受け、求人情報として保有する。
  • 転職エージェントのサービス利用の申込みを行った転職希望者から希望条件を聴取し、保有している求人情報の中から合うものを紹介する。

という方法で企業側と転職希望者をマッチングします。
求人情報を保有する際や転職希望者のサービス利用の際には料金は発生せず、企業が採用した時点で採用した企業側から成功報酬(紹介料)を受け取ることが多いです。何人応募があっても採用に至らない限り料金は発生しません。それなので成功報酬(紹介料)は高額になりがちです。

採用した時点で料金が発生するので、転職エージェントを利用して採用した人がすぐに辞めるようなことがあると採用コストが無駄になってしまいます。

以上

文責:弁護士 川﨑翔