産業医の先生が開催している労務とメンタルヘルスに関する勉強会に参加しました。
前半は企業のパワーハラスメント対策(パワハラ防止法関連)がテーマでした。
私からは「パワハラをしている社員にどうやって、パワハラをやめさせるか」といった視点からお話しをしました。
パワハラをしがちな社員は、部下に対してよかれと思って強めの指導や叱責をしてしまうという傾向が強く、なかなか自分の行動が問題であるという認識がないのが難しいですね。
後半のケーススタディでは、メンタルヘルスと転勤がテーマの事案でした。
復職のステップを会社と従業員とで共通認識をもつことが重要ですね。
本ブログに関連する質問と回答・解説
Q.「パワーハラスメント」の定義を教えて下さい。
A. 職場における「パワーハラスメント」とは、職場において行われる
- ① 優越的な関係を背景とした言動であって、
- ② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
- ③ 労働者の就業環境が害されるもの
であり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいう、とされています。
(厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室))
客観的にみて、業務上の必要性があり、かつ、相当な範囲の中で行われる適正な業務指示または指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しないとされています。
Q. 「①優越的な関係を背景とした言動」とありますが、部下から上司に対する言動についてはこれに該当せず、パワーハラスメントになることはないということでしょうか。
A. 「①優越的な関係を背景とした言動」は、必ずしも上司から部下への言動に限定されません。
厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)が公表している見解では、以下のとおり、同僚や部下による言動であっても、「①優越的な関係を背景とした言動」に該当し得るとされています。
- 同僚又は部下による言動であっても、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの。
- 同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの。
このように、「①優越的な関係を背景とした言動」に芸当し得るか否かは、会社内における役職や年次といった形式的な側面だけで判断するのではなく、実質的に見て、業務を遂行するに当たって、当該言動を受ける労働者が行為者とされる者に対して、抵抗や拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものに該当するか否かで判断することになります。
Q. パワーハラスメントの定義の中に、「職場における」とありますが、たとえば飲み会の席なども、「職場における」に該当することがありますか。
A. あり得ます。
セクハラの事案ではありますが、従業員同士で行った二次会カラオケにおけるセクハラ行為について、一次会が従業員同士の懇親を図る目的であったこと、帰宅しようとする女性を誘って二次会に行き、仕事の話を絡ませながら性的嫌がらせを繰り返したとして、職場におけるセクハラ行為と判断され、会社の責任が認められた裁判例があります(大阪地判平成10年12月21日)。
このように、勤務時間外の「懇親の場」であっても、実質上職務の延長と考えられるものは「職場」に該当するとされています。
「職場」に該当するか否かの判断に当たっては、職務との関連性、参加者、参加や対応が強制的か任意かといったことを考慮して個別に行われます。
Q. 業務上明らかに遂行不可能な量の仕事を与えることはパワーハラスメントに該当することは分かるのですが、逆に、その人の能力や経験に照らして明らかに程度の低い仕事しか与えなかったり、仕事を与えないこともパワーハラスメントに該当することがありますか。
A. あり得ます。
たとえば、①管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務しか行わせないことや、②気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないことは、「過小な要求」(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)となり、これについてもパワーハラスメントと判断されることがあります。
以上