最近、顧問先の医療機関から、患者さんからいただく同意書や説明書といった書類の作成を依頼されることが増えています。
このような書類を作成する場合、どうしても「医療事故」や「個人情報保護」といった観点に注意が向きがちです。
しかし、業務の流れを阻害しないかという点にも十分に配慮する必要があります。
同意書の作成を義務付けたことで、業務の流れが阻害され、患者さんの待ち時間が増加(診察にかけられる時間が低下)、結局患者さんの満足度を下げてしまったということではあまり意味がありません。
特に顧問弁護士のような第三者的立場でアドバイスする場合、現場を知らずにアドバイスしてしまうということは避けなければいけません。
同意書を作成するとして、どの程度の記載にするのか、どの程度の説明で足りるのか、また、どのタイミングで患者さんに記入を依頼するのかなど、細かい配慮が重要です。
顧問先医療機関と緊密なコミュニケーションをとるという基本が大事だと考えています。
本ブログについての質問と回答・解説
Q. 同意書を作成する目的は何なのでしょうか。
A. 同意書を作成する主な目的は、医師が患者に対し、医療行為についてきちんと説明したことを示すことです。
医師は、患者が自分のことを自分で決められるように、行おうとしている医療行為の内容を適切に説明しなければなりません。いくつか選びうる医療行為がある場合には、それらを示し、違いを説明する必要もあります。
万が一、後々に説明の有無で揉めて裁判になった場合には、同意書の存在が説明をしたことを証明する助けとなります(必ずしも同意書の存在だけで証明できるとは限りません。)
Q. 患者に医療行為の内容を説明する際、どのようなことを説明しなければならないのでしょうか。また、どのくらい詳しく説明する必要があるのでしょうか。
A. 説明の内容については、診断の内容、患者の現在の状態、予定している治療法の概要と目的・方法、治療の危険・副作用の可能性、代替できる治療法の有無・内容、放置した場合の転帰、治療期間などを医療水準に即して説明することとなります。
これらをどの程度詳しく説明すべきなのかは、ケースバイケースです。患者の理解力や実施する医療行為の内容などによって変わります。緊急医療など説明している時間のない場合や、患者自身が医師で自分の病状や医療行為について十分知識を有している場合には説明が不要です。
一方で、患者が理解力に欠ける場合や、危険性の高い医療行為である場合、そして医療行為を受けないという選択肢もある場合には、特に丁寧に慎重な説明をすることが求められます。
こうしたケースでは、「私は、○○についての説明を受け、同意いたしました」としか記載されていない同意書では足りないでしょう。どういった説明をしたかが後からわかるように説明書も交付し、説明した内容の要点をカルテに記入して交付した説明書の写しを添付するといった方法も採る必要があるかもしれません。
患者への説明の程度や同意書に記載する程度の判断は難しいものです。医療問題に詳しい弁護士に相談することで、リスクを抑えつつ業務フローを損なわない同意書の取得が可能となります。
以上