先日、産業医の先生の勉強会に参加しました。
具体的な事例を踏まえた検討など、弁護士としても大変刺激になりました。
いくつか弁護士としての見解も述べさせていただきました。
特に、エンゲージメント(企業と従業員との愛着心)とストレスの分析は勉強になりました。
一方で、エンゲージメントについては「アンケート方式」で回答を得るため、日本では諸外国に比べて比較的低めになってしまうという指摘はなるほどと思いました(「職場に貢献できていますか」という質問に対して、「私は貢献しています!!」と答えにくいですよね。)。
裁判所は、勤務が原因で精神疾患になったことが疑われる場合、直前の勤務時間を分析するという手法になりがちです。
確かに、勤務時間という客観的な指標を重視したい気持ちは理解できるのですが、年齢、職歴、エンゲージメント、ストレス耐性などといった点を総合考慮すべきなのではないでしょうか。
用語解説
産業医
事業場において、その事業場に勤務する労働者の健康管理等のために、必要な助言や指導、勧告を行う医師です。
産業医は、労働安全衛生規則という厚生労働省令が定める要件を備えたかたである必要があります。医師免許をもつかたが誰でもなれるわけではありません。
事業場に勤務する労働者の人数規模や従事する業務によって、産業医を選任する義務があったりなかったりするほか、産業医を選任する義務がある場合でも、嘱託産業医(非常勤)でもよかったり専属産業医でなければならなかったりします。
専属産業医の勤務日数は特に決められていませんが、基本的に週に4日程度常勤することが目安です。
産業医の業務として、たとえば次のようなものが挙げられます。業務内容において嘱託産業医と専属産業医に違いはありません。
- 健康診断の結果チェック及び事後の指導、就業判定
- ストレスチェック制度に基づく高ストレス者の面接・指導
- 休業者に対する復職の可否の意見
- 就業上の配慮に関する判断をし、指導や勧告を行うこと(作用環境等により従業員に健康被害が発生するリスク判定等)
- 長時間労働者への面接
- 衛生委員会への参加(勤務する労働者が常時50名以上の事業場においては、衛生委員会を設置しなければなりません。)
- 原則1か月に1回の(要件を満たしたときは2か月に1回の)職場巡視
患者の治療を行うわけではないというのが大きな特徴といえます。
古い資料ですが、産業医を選任する義務のある事業場のうち実際に産業医を選任している事業場の割合は約87%という状況である統計が示されています。
エンゲージメント
エンゲージメント(engagement)とは、本来は「婚約」「誓約」「約束」「契約」などの意味を持つ英単語ですが、「深いつながりをもった関係性」という意味から、企業活動においては、会社と従業員との間に確固たる信頼関係が構築されていることを意味します。
例えば、「社内におけるエンゲージメントの向上」は、「従業員が会社に対しての愛着や貢献の意志をより深めること」ということを意味します。
従業員のエンゲージメントを向上させる主な要素として、以下の点が指摘されています。
①働きやすさ
社内や取引先との人間関係がが良好に保たれ、従業員がその職場が自分に合っていると感じられること
②仕事のやりがい
従業員が業務を行うにあたって「こうありたい」と感じる理想が達成されている
③会社のビジョンへの共感
会社が目指すビジョンや社風などに従業員が共感できていること
こうした要素を満たして従業員のエンゲージメントを向上させることは、長期的には会社に貢献意識の高い従業員を育て、離職の防止にも繋がります。
以上