医療機関におけるクレーム対応と弁護士保険

大手保険会社が「医療業務妨害行為対応費用保険」を売り出すようです。

クレーム対応のために弁護士を依頼した場合、弁護士費用の一部を支払うという保険ですね。
一見、医療機関にとってとてもメリットのある商品に思えます。

しかし、クレーム対応とは「弁護士が介入して終わり!」という単純な構造ではないと思っています。
実は、ここ数年間で私が顧問先から依頼を受けて、クレーム対応をしたというケースはありません。

というのも、クレーム対応において弁護士が介入するのは最終段階だからです。
医療機関が謝罪や説明を尽くしても、クレームが沈静化しない場合にのみ、弁護士が介入すべきだと思っています。

言いがかり的なクレームは別として、通常は医療機関側に落ち度があるため、どのように謝罪・説明をし、今後そのような事態が生じないようにするためにはどうすべきかという点にこそ意味があります。

私の場合、顧問先からクレームの相談があれば、まずはどのように担当者から謝罪等をすべきか、ミスの原因は何か、今後どのように制度を変えるべきかという点まで丁寧にアドバイスすることにしています。

顧問弁護士として、顧問先医療機関の日常業務を知っており、緊密なコミュニケーションがとれるからこそできることだと思っています(顧問弁護士であればクレーム前の「予兆」の段階で対応することも可能です。)。

「クレームが発生したから、スポットで弁護士を依頼して終わり」というのは、もったいないと思います。顧問弁護士と十分に協議して、業務を改善していくということが重要でしょう。

本ブログについての質問と回答・解説

Q. クレーム対応で一番大事なことは何ですか?

A. クレームの種類を3つに分けることです。具体的には、(1)患者に問題がある(2)医療機関・クリニックに問題がある(3)どちらとも言えない、の3つに分けることです。3つに分けることで具体的な対応方法が見えてきます。

Q. 患者に問題がある場合はどうすればよいですか。

A. 毅然とした対応をしましょう。患者に問題があるにもかかわらず中途半端な対応をとってしまうと解決がより困難になってしまうことが経験上多いです。

Q. 医療機関・クリニックに問題がある場合はどうすればよいですか。

A. 真摯に謝罪をし、誠実に対応しましょう。誠実・真摯な対応を行えば、クレームの大部分は解決することが経験上多いです。

Q. クレームの原因については、患者側、医療機関・クリニック側のどちらにあるのか判断が付きにくい場合はどうすればよいですか。

A. 個別具体的な対応が必要となってきます。場合によっては弁護士など専門家への相談も検討するとよいでしょう。

本ブログについての用語解説

医療業務妨害行為対応費用保険

クレーム行為により診療が阻害された場合、①対応に関する無料相談サービスがあり、②弁護士委任した場合の費用補償をサポートする内容の保険と言われています。

本ブログに関連する質問と回答・解説

Q. クレーム対応でスタッフが困っています。どうすればよいですか。

A. スタッフ1人に任せずに、医療機関・クリニック全体で対応していくことが必要です。また、弁護士などの外部の相談窓口があると、スタッフの心理的負担が和らぐこともあります。

以上

文責:弁護士 川﨑翔