昨日、健保法改正研究会のシンポジウムに参加しました。
個別指導や監査について活発な意見交換がなされており、大変勉強になりました。近時増加傾向にある適時調査についての報告もありました。
適時調査は現時点では、病院(一部地域では有床の診療所)のみということのようですが、今後はその範囲が拡大される可能性もあります。
診療報酬の自主返還を求められた場合、経営に大きな影響を与えることは必至です。
病医院のコンプライアンスが今以上に求められることになりそうです。
用語解説
個別指導
個別指導とは、診療報酬請求等に関する情報提供があった場合や、個別指導をしたが改善が見られない場合になどに行われる個別面談方式の指導です。
個別指導を理由なく拒否したり、個別指導の結果が「要監査」であったりした場合は監査が行われることになります。監査が行われると、注意・戒告といった措置や、最悪の場合は指定取消の処分を受ける可能性があります。
診療報酬の自主返納
個別指導の結果、厚生局が不当な請求と判断したものについて、自主的に診療報酬を返還するよう求められます。
建前上は任意の返還を求めるものですが、拒否した場合には、再指導だけでなく、監査や保険医・保険医療機関の指定取消しといった処分が後に控えていることから事実上返還せざるを得ず、クリニックの経営に大きな影響を与えます。
本ブログについての質問と回答・解説
Q. 最近の個別指導の状況はどのようになっているのでしょうか?
A. 令和4年7月6日時点において厚生労働省が公表している最新の情報は令和2年度についてのもので、個別指導の件数等は以下のとおりです。
- ■個別指導 1,797件(対前年度比 2,918件減)
- ■特徴等
- 令和2年度は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、個別指導、新規個別指導及び適時調査の実施の見合わせ等を行っていたため、実施件数が前年度比で大幅に減少しています。
- 令和2年度は新型コロナウイルスの影響で個別指導件数も激減しています。
- しかし、平成27年~平成30年にかけて個別指導件数は毎年増加傾向にあり、令和元年には微減したもののそれでも4,700件を超えていました。そのため、新型コロナウイルス感染が落ち着いてくれば、また個別指導件数は4700件/年ちかくまで増えると考えられます。
Q. 個別指導を受けた場合は、必ず返還金を支払わなければならないのでしょうか?
A.
- 個別指導の結果、特に問題がないと判断された場合は返還金を支払う必要がありません。
- 一方で、不適切な診療報酬請求があったと判断されると、自主的に返還金を支払うよう求められます。その場合は、対象となったレセプトの内容を医療機関が自主点検して、過大に請求していた診療報酬分を該当する保険者へ直接返還する(または次回以降の診療報酬から控除する)ことになります。
- 実は、この返還金の支払いは法律上の義務ではありません。厚生大臣はあくまで任意に返還することを求めているのです。しかし実際にはほとんどの医療機関が自主返還に応じており、厚生大臣による返還の求めは「事実上の返還の強制」となっているのが現状です。
Q. カルテの記載について気を付けたほうがいい点を教えてください。
A. 以下の点は個別指導で指摘されやすいので気を付けてください。
- 病名の整理をきちんと行う(疑い病名から確定病名への変更、転帰等)
- 自費診療と保険診療で診療録を分ける
- 保険医療機関及び保険医療養担当規則の様式第1号(1)の1~3をきちんと作成する
- 診療録の修正については、修正前の内容がわかるよう二重線で行う
- また、指導管理料の算定に必要な事項(指導・管理内容や治療計画等)の記載が全くなかったり、読めなかったりする場合は多額の返還金を求められる場合があるのでこの点も注意が必要です。
以上